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自治体封筒評論家の運営するブログ

「封筒は提供できない」という回答文書の入った自治体封筒

あんまり日頃公にすることのない封筒調査研究に関して。ここは、と思った自治体に対して、封筒の調査をしていることを明かし、提供を検討いただけないか相談することがある。対応は自治体によってまちまちであり、対応がまちまちであってしょうがないと心底考えている。提供いただけることもあれば、いただけないこともある。未だかつてない依頼に対し、検討してくださるだけで十分感謝している。

口頭で、封筒を提供することはできない、という回答が来ることにも慣れたが、先日少し面白い事例があった。

X自治体の角2の封筒が届き、うきうきしながら封を開ける。X自治体には趣旨を伝え、おそらく提供できるという回答をいただいたのだ。しかし、封筒に入っていたのは、「封筒をお送りすることはできない」という趣旨の文書と、私から送った未使用の返信用封筒。

封筒はある。が、提供することはできない。個人に封筒を提供することについて、X自治体内でNOが出たものの、担当した方が「依頼に対し回答をするという趣旨に照らす分には封筒を利用してよかろう」と判断してくださったのだろうか。私から送った返信用封筒に、回答文書を入れて返してもいいのだ。封筒を提供することはできないが、結果として、封筒が私の手元にくるこの名采配には感慨深いものがあった。もっとも、担当者の方はそこまでの念は入っていないかもしれないが……。

自治体封筒を蒐集しているのは、そこに地方自治の情念がいかなる形であれ組み込まれていることにほれ込んでいるからだ。余分な仕事を増やしてしまうことになるので、なかなか自治体に直接お願いすることが最善の策だとは言えないのだが、協力いただくたびに、何らかの形で自治体に私の感謝を還元できないものかと空想する。

続・同じ封筒、違う封筒(解決編)

一つ前のブログ記事の解決編だ。

同じ封筒、違う封筒|横浜市長選挙に伴う選挙管理委員会の封筒 - govenvelope.note

やはり同じ選挙でどうして封筒の様式がこうも異なるのか気になってしょうがない。と、迷惑は承知で横浜市のとある区の総務係へ問い合わせてみた(選挙管理委員会は、選挙が終わると大体バラされて総務係に置かれたりする。常置されている選挙管理委員会もあるが、兼務のような取り扱いになっている、はず)。

投票の案内は18区統一された封筒を利用している

結論からいうと、窓が二つの方が「統一された様式」である。18区統一された様式を利用していると聞いたときにはなんだか感動した。やはり、様式なのだ。 f:id:uniR:20210906140045j:plain

こちらが、「18区統一様式」である。大きな横浜市全てに基本的にはこの様式の封筒が利用されていると考えるとなかなか壮大な気持ちにならないだろうか。皆、封筒を開けて投票するか検討してくれただろうか。民主主義の元にこそ、みのり豊かな自治体封筒が存する……というのはちょっとポエジーにすぎるが。

では、鶴見区のような、右下に窓の開いていない封筒、これはなんなんだろうか。

対応してくださった職員の方によると、世帯分離等をしておらず、単身者でない場合は、「統一された様式」を利用しているようだった。一方、単身者向け(単身世帯向け)のものは、窓が一つの封筒を利用している、とのこと。なぜわざわざ分けているのかまでは聞けなかったが、下記のような理由もあるかもしれない。

  • 封緘前のチェック効率化(単身者向けのものは封書の重さが一意に定まるため、封緘チェックが簡素化できるはず)
  • 郵便発送時の仕分け効率化(上記とほぼ同じ理由。窓が一つのものは25g以内で送れるのかもしれない)

もちろん、これはただの推測に過ぎない。全部同じでいいところをあえて分けた理由が何かあれば、そこに地方自治の神が宿っていると思わないだろうか。

とにかく、夜中に抱いた疑問がやや解決したことで、非常にすっきりした。18区統一した様式、というのが何より良かった。訳のわからない疑問に、丁寧に対応いただいたとある区の総務係の職員の方には感謝が絶えない。横浜市の素晴らしい行政が実ることを祈り、取り急ぎの解決編としてこのブログを記した。

同じ封筒、違う封筒|横浜市長選挙に伴う選挙管理委員会の封筒

2021年8月22日、日曜日。この日、横浜市長選挙の投開票が行われた。選挙の内容・結果についての言及は避けるが、市長の方向性が変わることで封筒の意匠が変わる可能性について、封筒評論家として慎重に動向を見守っていきたい。

さて、選挙というと封筒。投票の案内が封書で来るのだ。来るのだ、と言い切ったが、これは自治体によるらしく、関東在住の友人は「投票の案内は葉書で来る」ということを教えてくれた。非常に驚いた。今まで横浜市台東区でしか投票はしたことがないが、いずれも封書だったので、すっかり「投票の案内は封書で来る」と思い込んでいたのだ。したがって、今回の市長選挙に伴う選挙の案内が入った封筒を手に入れられるのか、分からなかった。そもそも封筒がない可能性ということにも、留意していかないといけない。

おわかりいただけただろうか

今回、2枚の封筒を入手することができた(ご協力いただいた方には感謝してもしきれない)。とやかく書く前に、まず見ていただきたい。

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おわかりいただけただろうか。

勿体ぶってもしょうがないので話を進めると、片方は行政区無指定の封筒で、もう片方は「鶴見区選挙管理委員会」の封筒なのである。無指定の方は、差出人部分も窓開きになっていて、恐らく何区の選挙管理委員会のものであっても利用できる。

これだけだとそういうこともあるという気がするが、なぜ鶴見区は独自の封筒を用意するに至ったか? なぜ他の行政区と異なるものを利用したのか? というのはかなり気になる。行政区は、東京都にある特別区と異なり、基礎自治体ではない。行政区の首長は公選制でなく、ざっくり言うと、大きい市の行政を効率的に運用するために区分けされているに過ぎない(ざっくりすぎるし、何か間違っていたら訂正します)。つまり、地方自治の最小単位として、行政区があるわけではないので、行政区ごとの自治カラーが必ずしも濃いかというとそうでもない局面は珍しくないのだ。もちろん、行政区ごとにいろんな封筒を用意することもある。選挙管理委員会以外の封筒で私が現時点で所持している封筒でも、横浜市は区ごとに様々な封筒を用意しているようだ。

それにしても、この封筒、微妙なところの違いが気になる。

「世帯全員分」の謎

行政区無指定の封筒は、投票の案内が世帯全員分入っていると明記してある。しかし、鶴見区の方は、世帯全員分が入っているとは明示されていない。ひょっとすると鶴見区民一人一人に分けて送っているのかもしれない。

世帯ごとに案内を交付しないといけない、と言う決まりは恐らくないだろう(あるのだろうか)。そもそも、この案内がなくとも指定の投票所に行けば基本的には投票できる。世帯全員分をまとめて交付することのデメリットといえば、DV等への対応ができないことではないだろうか。世帯員の中でなんらかのトラブルがある場合、投票の案内がどうなるのか、その事務を私はよく知らない。

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裏面の文言も微調整されている。なぜ入手した鶴見区の封筒が殊更にご本人分のみ(と感じられる)封筒なのかは分からない。もしくは、世帯全員分であることを強調した行政区無指定の封筒の方が「新しい」可能性も検討したが、これは同じ日に投開票する同じ目的の選挙の案内なのだ。「余っていた分を持ち越して使った」と言う可能性は排除してもいい。

一体なぜこういう差があるのか。地方自治は謎が多い。

封筒は総じて優秀な出来

ちょっと偉そうな見出しになってしまったが、シンプルで、それでいて市民へ寄り添いたい感じもあり好感を持った。

透かし防止の地紋がイコットちゃんであるだけでなく、封筒のベロ裏もなかなかいい。

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「投票にイコット!」と言う呼びかけ。ジーンと来るじゃないか。若年層の投票率向上を狙っているのではないかと勘繰っている。イコットちゃんも、線の感じからしてベタな公共ゆるキャラとは少し違う印象がある。灯台下暗しな感じな上に足元フラフラしてるのは大丈夫なのか分からないが、イコットちゃんはかわいい。

ハサミがなくても開けられる封筒。とにかく、投票に来て欲しいという選管の強い意志を感じられる。

透かし防止の地紋のイコットちゃんは、投票箱に投票している別のイラストを利用している。この芸の細かさに気づいた横浜市民はどれくらいいるだろう。どんどん細かな意匠を凝らして欲しい。私がきっと封筒を入手したときには、封筒の細部に宿る自治の情熱を見つけるのだから。

それにしても、鶴見区選管用の封筒がある理由は謎だ。ひょっとしたら調べてみるかもしれない。その際には続報を書きます。

次回予告! 「横浜市ブランディングを封筒から読み解きたい」。乞うご期待。