大阪市福祉保健センターの封筒のこと
いっぱしの自治体封筒評論家として、Twitterでは書ききれないことを考えたので、取り急ぎ筆を執っている。ただし、あくまで「外部からなんとなく調べられる範囲」での記事となるため、正確性は担保できない。齟齬があれば是非教えていただきたいです。
概要
大阪市各区役所に属している大阪市福祉保健センターの長3封筒裏面広告が、内容物(新型コロナウィルス感染者に対する書面)に照らし合わせて、不適切なものだという指摘が市民からなされており、保健福祉センターは内容物に相応しい封筒を用いるよう努めることとしている。
福祉保健センターの封筒
「まいどなニュース」でも記載されているように、特段、新型コロナウィルス感染者へ向けた文書を郵送するためだけに製作されたものではなく、よくある広告入り封筒として機能していたと考えられる。市(及び保健福祉センター)として、個別の意図はなく、大阪市における経費削減策として広告入り封筒を製作したところ、今回の騒動に繋がった。とはいえ、指摘されたことに関し不関知を貫くこともせず、出来うる策として「『今は古い封筒をかき集めて対応している』」として、広告入り封筒を使用しないこととしている。「2020年6月から長形3号に掲載」との記述もあるため、7か月経った現段階でも一応、広告掲載のない封筒はあるようだ。
大阪市と封筒
大阪市は、一収集家としてではあるが、かなりこうした事務物品への経費を削減している方だと感じている。大阪市で使用している窓あき長3封筒は他自治体に比べ紙が薄く、透かし防止の地紋がほぼ表面に浮いている。内容物は透けないようになっているかと思われるが、大都市の割に……という感想は抱いている。
同時並行で広告不掲載の封筒を保健福祉センターに用意していないことも「よくあること」とまでは言えない印象がある。当然、私自身は様々な自治体に勤務したことはない(一か所しか深くはわからない)のだが、広告不掲載の長3封筒も用意しておくことも当然、他自治体ではありうる。今回の「広告不掲載の封筒を用意せず、一律に広告掲載封筒を使用した」という大阪市の行動については、なんとなく、さもありなん、という気持ちにさせられてはいる。
※広告不掲載の封筒を具備していなかったのかどうかについて、確たるエビデンスはなかったため、実際には用意されていた可能性があります。コメントにて指摘しただいた方、ありがとうございます(1/26 追記、なお個人TwitterURLが含まれるため、該当のコメント表示を行っておりません)
広告を掲載した封筒を使用することの是非
そもそも論として、自治体封筒に広告を掲載すべきか否かという話をすれば、これは私の考え方としては「掲載してもよい」ということには変わりがない。書面を郵送しない手段について(e-mailを用いるとかそういうこと)の議論もあろうかと思うが、現時点で、自治体が住民に確実に情報を送達したといえる手段は、基本的には郵送しかない。その郵送というコストに対して、自治体ができるひとつの手段として広告掲載があり、多くの自治体で取り入れられている。
掲載されている広告は、引越しのもの、葬儀関連のもの、住宅設備のものといったものをしばしば見かける。「葬儀社の広告」そのものに対しては違和感を覚えない。自治体の封筒には葬儀社の広告を載せてはいけない、というレギュレーションはないように思う。
ただし、広告を掲載した封筒を用途によって利用したりしなかったりすることはある。これもすべての自治体が、とは言えないが、私の経験した一事例として、「広告掲載の封筒はこの事務には避ける」という判断がなされることがあるのだ。
例えば、徴税関連事務には広告掲載の封筒を利用しないことがあった。住民の財産及び税金の納付という比較的ヘビーな事柄を扱ううえで、広告掲載の封筒を利用しない、という判断が不文律としてなされていた。それは、住民感情の逆撫でを行ったところで何一つ双方にメリットがないからだ。
したがって、私の疑問としては、「なぜ広告不掲載の封筒を用意しなかったのか(用意しておかなければいずれ感情を逆撫でしかねないことは住民窓口のある基礎自治体として思い当たるんじゃないのか)」という一点に尽きる。そして、その解がひょっとしたら「大阪市は封筒のようなもののコストを最小限にしているからだ(出費を許されなかったからだ)」ということに行き当たるのではないかと思っている。
封筒は住民への姿勢
自治体封筒評論家を標榜して長いが、こういう風に「炎上」する場面はほとんど見なかった。し、できれば見たくない。自治体の事務それぞれに人間がいて、その人間は色々な歯痒い思いをして職務に当たっていることを知っているから。とはいえ、今回の件に関しては、「予想しえなかった」というにはあまりに配慮が足りなかったと思う。過剰に炎上しなくてもいいと個人的には思うものの、こういうケースになりうるということは、あらためて各自治体がヒヤリとしているものなんじゃないだろうか。
封筒を収集しているのは単にデザインを眺めたいからというだけでなく、その自治体がどういう姿勢でもって封筒を製作しているのか類推するのが好きだからである。今回の炎上に「やっぱりな」という気持ちになってしまうのもまた悲しい。すべての自治体封筒が、安堵や喜びをもって受け入れられるような地方自治が行われることを、願ってはいる。
追記(2021年1月26日)
リンク参照元を「まいどなニュース」へ変更しました。